私たちが文京区、杉並区を始め、様々な地域の活動の応援や起業支援をしていて感じるのは、新しい活動・仕事を生み出すには“学びの場”が不可欠だということです。
もともとイノベーター的資質がある人は、プログラムなどなくても、自分で勝手に動き始めます。起業講座などに参加する方は「やってみたい!・・・でも、まだ準備が整っていないかも」という段階にいます。その人たちが求めているのは「日常でもない。しかし、全部自分自身のリスクとなる“本番”でもない」という、中間的な場です。
その中間性、ニュートラルさを裏打ちするのが“学びの場”という要素です。
ただ、大学の地域連携、COC(Center of Community)事業もそうですが、地域の市民講座、起業講座においても、「学び」の作戦変更が必要となります。
これまで講座や大学のどうしても先生が教えることに重点がありました。講座をしないといけないということで、地域課題の解決法は?起業とは?について、講義をしてしまいがちです。
しかし、学びの場に集う人は、既存の行政や企業や地域の中では「やりづらい」ことができる機会、つまり「研究・探求」ができ、それを行う「仲間」と出会える機会を求めています。そして、そこで「学び」を得るには、これまでの自分を縛る常識とは違う考え方と出会う機会であり、自分自身を見直す場であり、失敗できる場であることが必要となります。
講座やグループワーク、フィールドワークでも、失敗しないように、講師やコーディネーターが先回りしたり、受講生も「講師が求めている答を上手に出そう」としたり、「無難なところ」になってしまいがちです。
しかし、無難なところは、すなわち「大きく変化しないで済むところ」でもあります。既存の自分、周囲、世間では「普通やらないこと」をやってしまえるようにすること。つまり、「よそもの、わかもの、ばかもの」の「ばかもの(=その場の常識外れのことをしてしまう人)」を生み出すことが、学びの場の重要な使命となります。
教師としてやってきた人の転換が難しいのは、ここです。それが、アクティブ・ラーニングやPBL(プロジェクト・ベース・ラーニング)などが普及しきらない大きな溝となっています。
そして、失敗しながら学んでいるエンパブリックの僕たちが、これから提供していきたいことは、この失敗しながら進めていける学びの場の創り方だとも、改めて感じています。
※ これからの学びについて、失敗できる場の大切さを考えるヒントとなる動画が、トニー・ワグナー「遊び 情熱 目的」です。 教育だけでなく、地域づくり、ビジネスのイノベーションに関心ある方も、ぜひご覧ください。