2013年5月、Wajya編集長の松島さんと広石が対談した、「場づくり」のツボを順番に紹介していきます。
松島さん:エンパブリックは、「場づくり」を研究して、そのノウハウやスキルを使った場づくりをサポートされているということですが、場づくりがビジネスになるというのはスゴイことですね!
広石:エンパブリックは、2008年に東京の文京区根津というところで立ち上がりました。アメリカで生まれた「社会起業」という言葉が少しずつ日本に浸透し始めたころで、「場づくり」という、実にNPO的なものを、株式会社でビジネス展開するというイメージは、設立当時はほとんど理解されなかったですね。(笑)
「場づくり」をサポートする仕事を始めようと思ったのは、社会起業をテーマにした講座を初めて開いた時に、2時間半くらい一生懸命準備して話したら、参加者からのアンケートに「内容は良かったけれど、広石さんの話が長い」と書いてありまして(笑)。その時に、「そうか、この場に集まっている人たちは、自分のことを話したくて、誰かと出会いたくて来ているんだ」と気が付いたんです。だったら僕は、そういう「場」をセットしてあげればいいんだなと。
「場」というのは、自然派生的には生まれません。たとえば、沖縄行きの飛行機を想像してみてください。そこに乗り合わせた300人の中には、今、自分がものすごくほしい知識を持った人がいるかもしれないけれど、現実には、知らない人とは誰も会話をしませんよね。でも、そこにいる300人が本当に話し合うことができたら、いろんなプロジェクトが生まれるでしょうし、ものすごく面白いはずです。なぜなら、そこに乗り合わせているのは、何かしら沖縄と関わりのある人たちだから。けれども、せっかく同じ場所で2時間過ごしていても、何も生まれないんです。それぞれが個別の用事で飛行機に乗って、個別の用事で散っていきます。人が集まるだけでは、出会いもつながりも生まれない。だから、「場」という空間が必要なんです。
たとえば、講演会があるとしたら、その講演会に集まっているという時点で、そこには何らかのフィルターがかかっているんですよね。だからそこに集まった人たちの中には、何か共通点があるはずなんです。映画館もそうですよね。その映画を選んで観る、という時点で、何かしらの共通項があるはずです。そこをきちんと見つめれば、実は、そこにいる人たちとの出会いやつながりが生まれるかもしれない。
ただ人が集まるだけではつながれないし、コミュニティも生まれないけれど、そこに何かしらのちょっとした仕掛けがあることで「場」は生きてくる。それが、「場づくり」という技術なんです。