はじめまして。みほてぃと申します。
「WS企画運営などQUE」(WSはワークショップの略です)という長ったらしい名前で、みんなであそんだり、本を交換したり、数字についてお話をしたり、作品をつくったり、またコラボレーションで、真面目にLGBTsに関するイベントをしたり、インタヴュー本のZINEまでつくったり、いろいろな活動をしている団体の代表です(QUEはクエと読みます)。
活動していく中でよく聞かれる質問があるので、さきに説明させてください。
まずは、「なんでこれを始めたの?」というもの。
バイトができない状況だった自分が、飲み代を捻出するために始めたのがきっかけです(不純な動機ですみません・・・)。
次に、「QUEってスペイン語の“何”って意味ですよね?」。
違います、山口県が誇る幻の高級魚、クエをかっこよく書きたかっただけです。わたしの変顔がクエにそっくりなので。
あと、NPOでも会社でもありません。好きで集まっている集団です。今のところほぼ利益も出ていません(笑)。
最初は新潟で一人で始めたこの活動。温かいお客さんやスペースに恵まれ、あれよあれよと言う間に人が集まり、ただいま七人体制の団体となりました。現在、新潟と東京の二拠点で活動を展開しています。
さて、『「アソビ」でこえる つながりを見つける』というキャッチコピーのお話を通して、このQUEの活動を具体的に紹介できれば、と思います。
●「アソビ」でこえる
いま一番回数を重ねているWSが「PHOTOリレー小説」というものです。
これは、“写真を挿絵にして、みんなで小説をつくっていく”というノベライズゲームです。高校の国語の時間にやったのが楽しかったので、WSとしてやってみようと思い、始めました。
QUEは、みんなで楽しくあそぶ・わいわいする、というWSが多いのですが、なんとなく楽しいというだけで、「なぜ、あそびのWSがいいのか?」に関しては特に掘り下げて考えてはいませんでした。その重要性に気づいたのは、今年の二月のことです。
知り合いづてで、とあるコミュニティカフェでPHOTOリレー小説のWSをすることになりました。その時、手話でコミュニケーションをとられる方が飛び入りで参加してくださいました。実はその日まで、わたしは手話をされる方とコミュニケーションをとったことがありませんでした。
共通の知り合いも混じっていたので、すこしはほっとしましたが、自分は手話もできないし、どうやってやりとりをすればいいのかわかりません。筆談の仕方や話し方など、知り合いやご本人から教えてもらい、「うまくできているかな?」と模索をしながら、WSを進行していきました。
毎回わたしは自身もゲームに参加しつつ、WSのファシリテーションをします。みんなで小説を書き、朗読しながら笑っていると、いつの間にか“口で話す人、手話をする人”という枠組みがわたしの中で取り払われていました。そして、自然とその方と仲良くなっていました。
その時、「あそび」とは、頭の中に勝手につくられた「垣根」をこえて往き来する手段でもあるのだ、と感じました。
つまり、みんなで一つのあそびをすることで、それぞれの持っているカチカチにかたまった属性のイメージ(男・女・LGBTsとか、子どもと大人とか、日本人と海外の人とか、全く違うことを仕事にしてる人同士とか)が一旦解体され、自由に往き来ができるようになるということです。そして、あそびが終わるとまたそのイメージは構築されるのですが、前の状態ではなく、すこし柔軟性のある属性に変わるのです。
それが、「あそび」を使ったWSなのだと思いました。
その後キャッチコピーを考える段階で、「あそびをもっと広義にしよう」と、カタカナで「アソビ」と表記するようになりました。
●つながりを見つける
翌三月に行った「1冊持ちより交換会」という、自分の好きな本をプレゼンして交換するWSで、『博士の愛した数式』(小川洋子)を持ってきた女の子がいました。
フリートークの時間になると、「興味深い数字には“素数”だけでなく、“友愛数”“社交数”“完全数”・・・と、様々なものがあるんですよ」と話し出す彼女。その話がとってもおもしろく、「一緒に“素数カフェ”をやろうよ!」という風に盛り上がり、彼女はその場でメンバーとなって一緒に活動をすることとなりました。
こうして、数字の世界の魅力について語り合う「素数カフェ」が実現したのです。QUEの東京メンバーは「数字なんて無理」なガチ文系。そのメンバーが彼女の数字トークを楽しく感じられました。また、参加者も半分は数字について詳しく知っているわけではありませんでしたが、みなさん満足気に帰って行かれました。
よく考えてみると、数字というのは元々そこらへんにごろごろあります。わたしたちの誕生日だって、カレンダーだって、値段だって・・・。このWSでそのおもしろみを認識できました。
もともとつながっていなかったわけではないのです。数字のおもしろさとつながっていることを「気づいていなくて」、WSを通じてそれを「見つけられた」のです。
これは、昨年からコラボレーションをさせて頂いている、レインボーグッズ『いっぽずつ』作り手Yumiさんと行っているLGBTsのイベントでも言えます。そもそもLGBTsの人や、その問題とつながっていないわけではない。本当は、気づいてないだけで、つながっているのです。それを見つけるWSなのです。
●未完成の種蒔きとハコなき場
さて、最後になぜわたしがWSを続けているのか、今後なにをしていきたいのか、という話で締めくくりたいと思います(この写真は新潟で「575で遊ぼう」というWSをしたときのものです)。
わたしはやっていることに対して特に理由を求めない人なので、なぜ自分がWSを楽しくやっているのか、わかりませんでした。あるとき知人に聞かれてふと思ったのが、場づくりには「完成」がないから楽しいんだ、ということでした。
どんなに計画を立てたとしても、トラブルはつきものですし、人と人とがつながるのに一定のマニュアルはありません。もちろん毎回それなりの狙いはあるので、その都度「うまくいった」とか、「ダメだった・・・」ということはありますし、「次はいいものにするぞ!」という気持ちはあります。でも、「これが完璧!」というものを自分や参加者に押しつけたとしても楽しくはないし、思惑通りに全てが進行したら逆に気持ち悪いと思います(笑)。そこで得られる経験は言ってしまえば未完成のものですが、こうした経験を“種”として参加者に持って帰って頂きたいとも感じています。
QUEは特定のスペースを持っていません。場所を借りて、本当の意味でその場限りの場づくりをする、それがQUEなのです。
今後は、QUEの屋号をもっとメンバーが自由に使える団体でありたいと思っています。参加者だけでなく、メンバーも「アソビ」ができるようなQUE。そうすれば、どんどんおもしろいことができていきそうな気がします。そして、色々な方とコラボレーションをして、新潟・東京のみならずいろいろな場所で様々な活動をしたいと思っています。たくさんの人と出逢って、自分たちにも未完成の種を蒔いていければと思います。
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