みんなの場づくり

里山の力を借りて、「自然と関わる体験の場」づくり

一般社団法人まちやまの塚原と申します。
役所勤めを経験した後、環境教育を志してNPO職員に転身し、幼児からシニアまで幅広い層の方々を対象に、自然体験活動(キャンプや自然観察会など)の企画・運営をしてきました。
2015年春に、東京・町田に残っている里山を拠点として独立起業し、自然と調和した暮らしを体験できるプログラムを企画運営しています。

この度は、私が現在の活動に至った経緯などをお話させていただくとともに、里山をフィールドに実践している「場づくり」について、ご紹介したいと思います。

■なぜ里山?

私は、化石燃料に頼った社会では、いつか限界がくると考えています。
解決策の一つとして、古来より農を軸とした循環型の暮らしが営まれてきた里山で、自然と調和した暮らし方を実践し、そのエッセンスを広げていきたいと考えました。

■なぜ町田?

はじめから町田にこだわっていたわけではなく、町田市北部に残っている里山を所有している方とたまたま縁があったというのが直接的な理由です。
ただ、地方部よりもなるべく都市の近郊で活動したいという気持ちはありました。東京都内およびその周辺でも、自然が残っているところは結構あります。(人口の大部分を占める)都市に住んでいる人たちに、自然と関わりながら暮らす楽しさや幸せを知ってもらいたい。その結果として、少しずつ循環型の暮らしが広がっていってほしい。これが根本にある想いです。
【まちやま】という団体名には、「町田の里山」という意味の他に、「都市(まち)と自然(やま)をつなぐ」という意味を込めています。

■里山の持つポテンシャル

里山には、自然の恵みがたくさんあります。畑で農作物はできる、キノコや山菜も獲れる、エネルギー源として薪炭が確保でき、自然素材を使って道具も作れる。これらの恵みは、化石燃料に比べてはるかに持続性を持っていたはずなのですが、エネルギー革命により、食糧やエネルギーなど資源の供給源としての里山の役割は一気に縮小してしまいました。
それでも地域によっては、「生産の場」としての役割を十分担うことができると思いますし、現代では「癒しの場」、「レクリエーションの場」、食育や木育などの「学びの場」といった、多様な役割が期待されています。

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■東京・町田産の小麦でピザ作り体験!

【まちやま】では、里山のフィールドを活かして、都市に住む人々の「体験の場」をつくっています。都市に住んでいる人たちに、自然と関わる楽しさや幸せを知ってもらうには、直接体験してもらうことが一番だと考えるからです。
ここで、「場づくり」の事例として、7月頭に行なったピザ作り体験のイベントをご紹介します。

生地の原材料は、私が冬に種を撒いて育てた、無農薬の東京・町田産小麦です。ピザ作りの前段で、はさ掛け(乾燥)をしておいた小麦を見てもらいました。穂を触ったり、中には実をかじる参加者もいました。このような体験をすることで、小麦がより身近に感じられると思います。
小麦はあらかじめ市内の製麺所で挽いてもらい、この日は、小麦粉をこねて生地を作るところから体験してもらいました。ピザを焼き上げるのには、ドラム缶窯を使いました。燃料は、近くの山から出た薪です。食材も燃料も地産地消です。力を合わせて完成したピザは絶品で、かなりの量を用意したにもかかわらず、見事に完食していただきました。

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当日は、小1~シニアまで幅広い層の方にご参加いただきましたが、美味しいピザを食べたいという共通の目的があるので、皆さん協力しながら和気あいあいと作業を進めていました。初めて会った人同士でも、いつの間にか会話が弾んでいるから不思議です。同じ場で体験を共有するなかで、お互いの距離は一気に近くなっていきました。

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イベントでは、運営側が一方的に進めるのではなく、参加者の皆さんと一緒に気持ちのよい場を作っていくことを意識しています。受け身の姿勢よりも、主体的に関わってもらった方が、より楽しさや満足感が高まるようです。イベントの終わりに、楽しさとともに「小麦粉って町田でも作れるんだ~」「薪で焼くピザ、最高!」などといった気づきを持ち帰ってもらえたら、こちらとしては成功です。

■自然の中での「場づくり」はいかが?

上記の事例では、ピザ作りという参加型プログラムが「場づくり」の核ですが、自然(里山)というフィールドがもつ空気や開放感も、「場づくり」の要素として大きいと感じています。自然の中で、人は普段より心が開け、会話が自然と生まれ、コミュニケーションが円滑になります。【まちやま】では、これからも里山というフィールドの力を借りながら、そして参加者の皆さんと一緒に、魅力的な「体験の場」をつくり続けていきたいと思っています。

読者の皆さんは、既にそれぞれの「場づくり」を実践されているか、もしくはこれから企画されるという方が多いと思います。「場づくりのための[場]」として、自然の中に繰り出してみてはいかがでしょうか。もしかしたら、いつもとは一味違った何かが生まれるかもしれませんよ!

○塚原さんの体験イベントの情報や、活動報告が詳しく載っています!
一般社団法人まちやま http://machi-yama.org/

About the author

塚原 宏城(東京・町田市)

1979年6月 新潟県生まれ。2002年 北海道大学土木工学科を卒業。札幌市役所に入庁し、7年間下水道事業に従事。2009年 環境教育の指導者を志し、自然学校のパイオニアであるNPO法人国際自然大学校へ。幅広い年齢層に対して自然体験プログラムを企画運営。2015年 里山を拠点により地域に根差した活動を行うため独立し、『一般社団法人まちやま』を設立。
【主な資格等】森林インストラクター、自然体験活動コーディネーター、バーベキュー上級インストラクター、ネイチャーゲームリーダー