みんなの場づくり

「農村の価値」を高める「場づくり」とは?

初めまして。
私は福井県在住の荻田 英爾(おぎた ひでじ)と申します。
大阪出身ですが、福井に住んで7年になります。
大阪府郊外のベットタウンで生まれ育ち、子ども頃は川やため池、裏山など外遊びが主流の最後の世代かもしれません。
遊びは多種多様でメンコやコマ回し、ビー玉など遊び道具を使ったものから、生き物を取ったり、秘密基地をつくったり、草むらを探検したり…
その時折でルールを作ったり、遊び方を少し変えてみたりと今思えばかなりクリエイティブだったかもしれません。
そのころは「場づくり」などもちろん意識せずに遊びを通して「場」が発生していたのかもしれません。
その後はファミコンブームに伴い、「与えられた遊び」が主流となってきました。

大学生になってからは好きなサッカーを部活ではない形で楽しめる場を作りたくて親しい友人を代表としてサッカーサークルを立ち上げました。
その後、社会人になってからは、複数のチームが競い合う自主運営リーグを立ち上げ、まだインターネットがない時代に電話とFAXでやり取りしながら運営していました。
数年間続きましたが、一緒に立ち上げた友人が仕事の都合で離脱してからは残念ながら解散となりました。

その後はボランティア活動グループに加わり、運営にかかわることで活動の場を作ってきたり、自然環境保全活動の一環として、身近な都市公園の自然の魅力を伝える自然観察インストラクター講座で勉強し、翌年には講座の運営をボランティアでサポートしたりと時にはリーダーとして、またある時はサポート役として「場づくり」に関わってきました。

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一つの転機になったのは「緑のふるさと協力隊」と言う、農山村に1年間滞在して地域活動や農作業などをお手伝いするプログラムに参加した事でした。
宮崎県の北に位置する山間部、日之影町。
そこには水源があり、それを守る人達が居り、食料の生産現場があり、美しい農村風景があり、住民の対話の場があり、祭りの演舞に憧れる子ども目があり…自然と対話した暮らしが存在しました。
自分の感じた感動を伝えたいと「体験ツアー」を企画したりしましたが、1年の任期後、縁あって福井県に移住しました。
1年の滞在中に農山村の価値を何らかの形で伝えたいと思っていた中、それを実現できる仕事だと感じたからです。
「都市農村交流コーディネーター」と言うのが私の肩書ですが、仕事の範囲は福井県内全域で情報発信をしたり、地元の活動団体と個人や大学、企業等の団体の間に入って受入れプログラムを企画調整する事になります。

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そんな中、同じ「緑のふるさと協力隊」の同期で任地の福井県あわら市にそのまま残った友人から誘われて、「中山間地の棚田で草刈りを手伝ってくれないか、そしてこの素敵な場所に人を呼び込みたいと願っている農家さんと一緒にやってみないか?」と相談された事がきっかけで「もりみちプロジェクト」に関わる事になりました。
「もりみち」とは地元の人たちがこの棚田のある場所の事を呼ぶ名前です。シンプルにその名前を活動団体の名前にしました。

こんなに美しく自然豊かな場所ですが、地元の人たちにとっては作業効率の悪いお荷物でしかなく、圃場整備をしたがゆえに畦畔が高くなって草刈りが大変なことになっています。
そこを一人で黙々と草を刈っていたのが協力者である農家さんです。
草刈りの手伝いはしていましたが、最初はとにかく人呼び込もうと大豆の草取り、収穫、大豆の選別、豆腐作りと言う一連の流れを体感できるプログラムを実施しました。
2年目からは言い出しっぺの友人が福井を離れるアクシデントもありましたが、一番大変な草刈りを楽しくやってみようと言う事で畦畔に文字を書いたりするような遊び心も入れながら草刈りスキルを高める「グラスワークショップ」を展開しました。

参加人数が減るなど反省点がありましたが、3年目からは手での田植え、稲刈り、はさ掛け体験を中心としたプログラムにチャレンジし、「田んぼオーナー」の募集を開始しました。
今では稲作は機械化されて手でする必要は無くなったけど、もしもの時に慌てないためにも昔の技術を継承しておくのは大事だと考えて「手作業」にこだわっています。
その頃から地元の大学生、大学院生、大学教授、若手社会人、年配者など多様な人達に参加していただけるようになりました。
プログラムも「春の植物観察と野草天ぷら」や「ホタル観察会」、「田んぼの生きもの観察」、「外来種駆除と草木染め」などラインナップが増えて来ました。
また、活動を応援していただくサポーターの募集も開始し、年に2〜3回合宿して交流やスキルアップ、事業内容についての話し合いの場をつくっています。
活動としては今年で7年目になり、ようやく知られる存在にはなって来て、「良い活動してる」と言ってくれる人もいるようになりましたが、地元の人は一緒に活動している農家さんだけです。
対価も貰わずに自主的に活動している我々の事を地元集落の方は理解できないようです。
外部の人間である我々は「価値あるもの」と認識していても地元の人たちがそう感じていないとおそらく杉の木が植わって森になっていくのかもしれないのが歯がゆいところです。
そろそろこの場所を使って対価を生む場所として価値を示して行かないといけないフェーズに差し掛かっているのかもしれません。

この活動以外に仕事でも良く感じる事は、「お金」のみを価値判断にしている年配の方が意外に多い事。
もちろん経済を循環させるためには「お金」は大切なモノのひとつである訳ですが、それのみで世の中は回っているのではないことも事実です。
若い世代の中にはいくらお金を積まれてもインセンティブと感じない人達も増えて来ています。それ以外に価値観を見出しモチベーションとしている事とのギャップが生まれています。
そのギャップ埋めて行くためにはファシリテーションの力が必要なのではと感じています。

タイトルに「?」があったように私の場づくりはまだまだ答えが出ない謎ばかり。
でも多様な人の力をうまく生かしていく事ができれば、一人が考え付く事なんかよりもよっぽど素晴らしいアイディアになるのではと信じています。

なのでスピードは遅いかもしれませんが、地道に活動していきたいと思います。
今回は拙い文章でしたが発表できる機会を得たことに感謝します。
ありがとうございました。

○最近の荻田さんの活動の様子はこちらから!
都市農村交流員(ひでじ)のブログ http://ameblo.jp/291egtn/

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荻田 英爾(福井)