【特選】場づくりのヒント 【連載対談】場づくりを仕事にするとは?

これから場づくりを仕事にするには?

2015年4月28日に、根津スタジオで、「場づくりを仕事にする”の現在を語ろう-嘉村賢州×小笠原祐司×広石拓司」が開催されました。

エンパブリックと同じ2008年に、京都で地域や企業のための場づくりのNPO団体を立ち上げ、仕事にしてきた嘉村賢州さん(homes-vi 代表)、立川・山梨を拠点に昨年、起業し、この1年で150本の地域・企業向けのワークショップを行ってきた小笠原祐司さん(bond place 代表)と、エンパブリック広石のトークセッションです。

ここでは、場作りを仕事にすることについて、トークセッションの内容を3回にわたって紹介していきます。

場づくりを仕事にしたきた、とは?
  • 〔広石〕 home’s viとempublicは2008年、同じ年に創業して、仕事として場づくりに取り組んできた。小笠原くんは2014年に本格的に事業を始め、この一年で仕事にしてきている。2008年に、empublicが創業した時、「場づくりで会社?」と、かなり謎だと思われたのだけど、これまで、そして、今、場づくり仕事にするって、どういうことだろう?
  • 〔嘉村〕 僕たちは7年間、営業をしないでやってきた。早い段階で京都市100人委員会の仕事がとれちゃったので、その実績が大きかった。市長の肝いりプロジェクトをやっている団体として知名度が出来て、企業や自治体から依頼がくるようになった。
    ファシリテーターはその場こそが営業で、本当に良い場をやっていたら依頼は来ると考えている。そうやって7年間やってきたけど、研究や次の育成に十分な資金を稼げていないと感じている。場を体験してもらうため、年150中100くらいは、ボランタリーに近いものもある。僕自身は、場に参加してくれる仲間からお金をとることには抵抗感があり、home’s viの周りのコミュニティと事業は切り離してやってきた。
  • 〔広石〕 empublicも7年間を営業していなくって、口コミや紹介で仕事をしてきた。それはとてもありがたいことなのだけど、それが自分たちの弱みにもなっていて、スタッフが自分たちの本当の価値を外部に対して明確に伝えにくいことにつながっている。
  • 〔小笠原〕 生きていけるか、会社を辞めた去年の3月31日には分からなかった。しかし、がむしゃらに1年間やって、ダメだったら会社に戻ろうと思って、一生懸命やってみた。いくつか助成金が通り、自分がやった後に「てっちゃんのファシリテーションは他の人と違う」と言われるようになって、やっていけると思えるようになってきた。
    僕はこの1年、営業もしてきた。会社員時代に営業研修を担当したのが役立った。東京都市町村職員研修所では、打ち合わせの中で、講演の予定をワークショップ・タイプに変えていった。アンケートも良かったし、行動も変わった手応えがあって、山梨県でも絶対受けるはず!と考え、山梨県庁に営業したところ、2日後に決まった。フォローアップもやったら来年度も決まった。
    僕が意識しているのは、ただのベンダーにならないこと。依頼があったことを、そのまま実行するのではない。今の時代、ワークショップやファシリテーションは多くの人ができるようになっている。それができるから仕事になるのではなく、ちゃんと相手の話を聞いて本当の課題を聞いて提案する事が重要だろう。広石さんや嘉村さんは、その本当の課題やニーズを探ってきたからこそ、仕事になってきたのだと思っている。
  • 〔広石〕 よく社内でも話すのは、依頼者や担当者との打合せが、ワークショップだということ。
  • 〔嘉村〕 依頼者との「にぎり」が重要だと思う。
  • 〔広石〕 そう。クライアントや関係者と行動変容のプロセスを共有しておくことが大切だと考えている。担当者は、ワークショップで悪い点を出さないように、トラブルが起きないようにと考えることが多い。しかし、課題解決でも、チームづくりでも、途中で必ず問題やトラブルは起きる。そのプロセスを、しっかりクライアントともにぎることが大切だ。
  • 〔嘉村〕 変化を起こすには「愚痴を言ってください。言ってもいいですよ」という場づくりをする。違和感やむかついていることを吐き出さない限り、本当に組織は変わって行かない。
  • 〔広石〕  途中のしんどい時期が必ずある。トラブルを回避するとうまく行かない。漢方の治療では、病気が治る時に瞑眩(めんげん)という一時期、余計に悪化する時期がある。それを乗り越えて、体質が改善される。多くの組織や地域は、ここに向き合う必要があると感じている。
  • 〔嘉村〕  自分がアイディアを否定しているから、アイディアが出てこないことを、経営者側が気づいて行かないと行けない。それは経営者にとってストレス。だから、経営者側の文句も受け止めて行かないといけない。
  • 〔小笠原〕 UIターンについてのワークショップをした時に、山梨の制度の問題点がゲストトークで出た。そのことに後から文句も出たのだが、参加者からは関心を深めてくれ、最後は成功した。プロセスをしっかりとにぎることを、大切にしている。
これから場づくりは仕事として広がっていくか?
  • 〔広石〕  いま、場づくりやファシリテーションを仕事にする人やしたい人は増えていて、やっていけそうな時代の潮流がある。その人たちの雰囲気は、10年、20年前に、まちづくりワークショップをやってこられた人たちとは違う雰囲気がある。マーケットが広がっていて、学ぶ環境もできてきている。そのような中で、ファシリテーションを仕事にすることについて、どう考えていますか?
  • 〔嘉村〕  先の見えない時代だからファシリテーションが重要だと感じる。逆に企業も自治体も、対話の場がなさ過ぎで、それでどう将来をつくっていくんだろうと思うくらい時代の必要性を感じている。
  • 〔広石〕  逆に、ちょっとやればできそうな感じもするので、企業の中で、自分たちでできそうな人が増えてもきている。
  • 〔嘉村〕 そんな時代だからこそ、プロ・ファシリテーターとアマの違いも重要になってきていると感じる。
  • 〔小笠原〕 僕が場づくりを始める時、40冊くらい本をひたすら読んで、賢州さんが100人委員会のワークショップなどで話している内容がYouTubeにアップされていたので、それを実践例として一言一句学んで、実践して経験してふりかえって・・・と勉強してきた。
  • 〔広石〕  場づくりを学ぶ時、一言一句が重要だと思う。僕たちが取り組む、地域住民の人たちが自分たちでワークショップを実践するプログラムでは、ワークショップの中身には細かく口を挟まないが、最初の5分だけは練習を何回もしてもらっている。自分たちが何者で、なんでコレをやるのか。参加している人が理解し、その場にのってきてくれたら、その場はうまくいく。「あ、この人達、大丈夫なんだな」と思ってもらうまでのことが重要だと伝えている。
  • 〔小笠原〕 真似しようとして思っていても、かなりポイントを逃すので、全部入れていった。場づくりの守破離というコラムを書いたが、最初の「守」では、前後の順番も語尾も含めて一回自分でやって学ぶのが重要だと思う。自分が要素をとれているとは限らないので、全部まねてみるのが重要で、そのうち、自分の型をみつけていくことが大切だと思う。
    その意味で、自分がそうだったように、今、ネットもあるし、本や講座など、ワークショップもファシリテーションも学べる環境は整ってきている。だから、ファシリテーション自体はプロ、アマ問わず、誰でもできるようになると思う。アイディア出しは誰でもできるが、アイディアが出てきたプロセスの中から、どのような変化が、どこで変化が起きたか、データ分析をするかしないか。プロセス分析をしたらいいと本にあるが、実際にやっている人はほとんどいない。プロかどうかは、その場よりも、事前事後で本当の課題出しができるかが大きいと思う。

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