みんなの場づくり

地域も参加者も学びあう、農業体験の場づくりを目指して

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はじめまして。髙橋朝美と申します。
現在、環境パートナーシップオフィスのコーディネーターとして、主に関東圏内の地域の環境課題解決に取り組む団体と自治体、企業、個人をつなぐ仕事をしています。
現職ではさまざまな場所で場づくりをする人たちのサポートがメインになるため私自身は特定のフィールドは持っておりませんが、前職では、純農村地帯にて生産者と消費者をつなぐグリーンツーリズムの企画などの仕事をしており、自身のフィールドを持って活動していた経験があります。その時のご縁で、今も個人的に「田んぼの生きもの調査」などの農業系フィールドワークのコーディネートをしたりします。
今回は、上記の経験を踏まえて、私がフィールドワークのコーディネート、つまり「場づくり」について、大切にしていることをいくつかお話させていただこうと思います。

■フィールドワークの目的は何かを掘り下げる

どんなフィールドワークも、目的があって始まりますよね。
たとえば、有機栽培の田んぼでの農業体験の場合、
「環境にこだわっているお米だということを、もっと消費者に知ってほしい」
という生産者側のニーズを基に、
「自分の食べているお米がどのように作られているか知りたい」という消費者側の欲求を引き出す形で企画を作る、というように。
私が担う「田んぼの生きもの調査」とは、この流れの中の一部です。化学肥料や農薬を使わないことによって何が違ってくるのかを、生きものの営み、多様性を見ることで体験的に理解するためです。
ここで大事なのは、まず「この取り組みの何をどんな人に伝えたいのか」が、企画側ではっきりしているかどうかということだと思います。
漠然と「この取り組み(場所、モノ)の良さを知ってほしい」だけでは不十分で、その「良さ」とは何かを掘り下げる必要があります。
プログラムに意味づけの過程を、企画側のスタッフが本気で考えられているかどうかが企画の濃さを決めます。
当たり前のことですが、意外と目的を見直されないまま踏襲され、マンネリ化してしまうイベントも少なくないと思います。
人も自然も社会も、何十年も同じということはあり得ませんからね。適度なリニューアルやイノベーションは必要になります。

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田んぼの生きもの

 

■フィールドワークの役割分担

目的がはっきりしたら、それを企画の関係者に共有するということになります。
しかし、関係者と一口に言っても、

  • 中心メンバー
  • 外部から招へいする講師等
  • (農業体験等の場合)生産者、圃場主
  • 当日だけ手伝うボランティアスタッフ

と、いろいろなレベルがあります。
この多様な関係者に企画の目的とそれぞれの役割を伝えることも、とても大切なことだと思っています。
参加者にとっては、全員が現地の人、関係者です。役割分担が明確でなく、何をしていいかわからない印象のスタッフが多いイベントだと、参加者も不安になりますよね。
もしもスタッフがダラダラしていたり、思うように動いてくれなかった場合、彼らにだけ非があるわけではないということです。
それを防ぐために、まず目的の明確化、次に役割分担の明確化が重要だと思います。
私も、一緒に場づくりをするメンバーについて、どんな人がいるのかを見渡して、把握するようにしています。

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スタッフに事前に説明

■「子ども」の事だけ考えない

さて、ここまでどちらかというと農業体験の場づくりに特化したことというより、イベント企画の大前提の部分を書いてきましたが、次にプログラムの中で意識していることをお話しします。これもすべて目的の明確化につながる内容ですが、「対象者について考える」ということです。
おそらく参加者の期待として「子どもに農業を体験させたい」ということが全面に出ると思います。企画側もまずそのことに重点を置く場合があります。もちろん子どもへの教育がテーマとして一つの大きな柱になることは間違いではありません。
しかし、そこで思考を止めず、このプログラムから何かを学ぶのは子どもだけか?を考えます。
その場に参加している人を細分化してみます。

  • 子ども(幼児~小学生)
  • 中学生、高校生
  • 大学生
  • 単身者

さらに、

  • 地元の親子
  • 自治体関係者

など、参加者全般を見てみると、見えてくるものがあるかもしれません。

子どもというのはフィールドさえあれば、はじめは嫌がったり怖がったりしても、自然と全身でその恵みを享受する存在です。大人が思っているより、多くのことを学んでいます。機会さえ与えることができれば、そこで子どもへのインプットは終わったも同然です。
イベントの終了後、大人にはアンケートを、子どもには絵を描かせるという手法をとることが多いですが、それを見れば一目瞭然です。
問題は、それを子どもにさせることを目的に来ている大人たちに、どう主体性と新しい発見をもたらすかということです。
なので、大人用の説明をする時間を作ったり、わざと子どもにも難しい説明をし、子どもに説明しているようで大人にインプットする、という方法をとったりします。
そして、生きもの調査の場合、親子でチームを組んで行うなど、必ず大人にも体験の場を用意します。

私は、フィールドワークを行う意味は、「体験」を通して、「知識を得る」だけではなく、実感として「分かる」というレベルに引き上げ、「行動」を変える新しい価値観の創造だと思っています。大人の価値観、行動を変えられなくては、残念ながら子どもに何も教えられません。

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大人も夢中で生きもの探し

■もうひとつのターゲット

「ヨソ者・若者・バカ者」がキーマンとはよく言いますが、「ヨソ者」としてコーディネーターの立場で入る場合、私が意識する対象者は、実は地元の生産者とスタッフです。企画側をなぜ?と思うかもしれませんが、フィールドを作り出す立場の彼らの理解が深まることが、継続するいいプログラムの条件だと思うからです。
農業体験の場合、必ずそのフィールドは地域のコミュニティと深く結びついています。外部から人がたくさんくることの意義と価値をより深く生産者に分かってもらうことが、地域の理解と直接的に関わってきます。
企画側が楽しんでいること、喜んでいることが何より大切なことです。

「企画側/参加者側」「大人/子ども」「生産者/消費者」「地域住民/都市住民」など、イベントに応じて切り口を変え、関係者の整理しそれぞれについて深く掘り下げることで、単なる「農業体験」が地域の活性化、ブランディングにつながっていく可能性を秘めていると思います。

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生産者と一緒に生きもの調査

■終わりに

私は、農の世界で、それを生業(なりわい)として生きる人が好きです。
農を中心に共存してきた里山の暮らしや生きものが好きです。
日本において、この暮らしや仕事がこの先も続くことを願っています。
そのために、その存在や価値を五感で感じることができる場づくりをしたいと思っています。よく考えたら、そういう単純な理由でこの活動を続けているんだ、と記事を書くことで振り返るきっかけになりました。
ヨソ者だからこそできることを、これからも続けて行きたいと思います。

ありがとうございました。

○環境パートナーシップオフィスの情報はコチラ
http://www.geoc.jp/

About the author

高橋 朝美(関東地方)

高橋 朝美(関東地方)

興味のフィールドは日本文学から有機農業、田んぼの生きもの、食文化まで幅広く、今も増大中です。そうして本能の赴くままに足を突っ込んできた世界での私の体験が、これからいろいろな“つなぐ”場面でお役に立てたら、と思っています。自分と、自分とつながる人々の可能性を信じて邁進します。

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